準結晶 ── 並進を捨てると、5回が戻る

周期結晶では 5回対称が禁制だった(並進と握手できないから)。でも「並進でくり返す」という約束を手放すと ── 5回対称は堂々と戻ってくる。
下は ペンローズ・タイリング2種類のひし形だけで平面をすき間なく敷きつめるのに、どこまでいっても同じ模様がくり返さない(並進周期がない)。なのに、中心は5回対称で、全体に秩序がある。

細かさ:
太いひし形 細いひし形
禁制が、戻ってくる
正五角形だけでは平面を敷きつめられない(すき間が空く)── だから5回対称の周期結晶は無い、というのが 回すと、増える の話だった。
ところが、太い/細い 2種類のひし形に「辺の合わせ方のルール」をつけると、平面をすき間なく ── しかも 絶対に周期的にならない形で ── 敷きつめられる。これが ペンローズ・タイリング(1974年)。

指紋は 黄金比 φ ≈ 1.618。タイルを細かくしていくと、太いひし形と細いひし形の個数の比が φ に近づく。φ は分数で表せない無理数だから、整数回でくり返す周期とは、原理的に両立しない ── これが「周期がないのに秩序がある」の正体だ。

現実の物質では 準結晶。1982年にシェヒトマンが Al-Mn 合金で 鋭い10回対称の回折を観測(=結晶のような長距離秩序があるのに、周期結晶では禁制の対称)。1984年に発表、長く否定された末、2011年にノーベル化学賞。結晶の定義は「周期的な並び」から「鋭い回折を与える秩序」へと広げられた。

つながる先 → 回すと、増える(5回はなぜ閉じない)系統的消滅(回折の指紋)